International Society of Life Information Science (ISLIS)

Journal of International Society of
Life Information Science (ISLIS)

30巻、1、2012年3月号

要旨 


【巻頭言】
(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.2

大門 正幸
国際生命情報科学会(ISLIS)常務理事
中部大学 大学院国際人間学研究科
全学共通教育部 教授
英語辞書で最も権威があるとみなされている『オックスフォード英語辞典』は、interdisciplinary「学際的な」という語の初出例として1937年のJournal of Educational Sociologyに掲載された例を挙げている。このことは、20世紀になって、「学際的な」学問の必要性が盛んに論じられるようになってきたという事実を反映している。その背景にあったのは、伝統的な学問分野は重要な問題を取り扱う事ができない、あるいは取り扱おうとしないという認識であり、また、あまりに専門性が高くなってしまい、しばしば益より害をもたらすようになってしまっている、という共通した認識である。そして、21世紀になって、学際的な学問の必要性は、ますます高くなっている。
 既存の、20世紀の科学パラダイムでは理解も説明もできない現象に関する研究の推進が必要である、との意識の高まりに応じて1995年に設立された国際生命情報科学会は、様々な学問分野を背景に持つ研究者たちが学際的に議論・協力する、貴重な場を提供してきた。
 これまでの号に掲載された論考同様、本号に収められたそれぞれの論考は、本学会の学際的な、そして先駆的な性質をよく反映している。特筆すべき点は、本号に掲載された論考の多くが、心身の健康に焦点を当てていることである。これは、3月11日の震災の影響(国際生命情報科学会の第31回シンポジウムもキャンセルを余儀なくされた)が色濃く残る日本において、生きる意味を真剣に問い直そうという気運が高まっていることと関係しているようにも感じられる。
 たとえば、スピリチュアルな存在としての人間の性質や、我々の命を輝かせる方法に関する知見を提供する、など、いかにささやかで間接的な形であったにせよ、本号が、震災からの復興を願う人達に有益な情報を提供できることを願っている。

[原著論文] Peer-Reviewed

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.5)
事前記録ファイルを使用したフィールドRNGにおける過去遡及的効果の検討

清水 武、石川 幹人
明治大学 情報コミュニケーション学部
要旨:
本研究では、乱数生成器(REG/RNG)によるフィールドRNG実験を実施し、フィールド意識と非意図的PKが、事前に記録された物理乱数をターゲットにした場合に、過去遡及的な影響を及ぼし、偏りを与える可能性を検討した。実験者は、日本のプロ野球の試合が開催された時間に8回、野球場にエントリーした。事前記録された複数の乱数ターゲットがノートブックPCに提示され、同様に物理乱数もリアルタイムに生成された。実験の結果、残念ながら事前記録のターゲットに対して、過去遡及的な効果はみられず、リアルタイムに生成した物理乱数においても偏りが得られなかった。最後に、フィールド意識に関連した今後の課題が議論された。
Keywords:
野球場、感情、Rpg105、Rpg102

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.17)
映像を用いたフィールドRNG実験:フォーカス説と感情説の検討

清水 武、石川 幹人
明治大学 情報コミュニケーション学部
要旨:
心物連関作用 (MMI) を検討する上で、物理乱数生成器(RNG/REG; Random Number/Event Generator)を使ったフィールド実験は方法論的にもっとも整備されており、フィールド意識が強く喚起される状況下で、RNGのビット出力に特異な統計的偏りが生じるという。本研究は、この特異現象を説明する仮説として、集団のフォーカスを想定する説と、集団の感情を想定する説に注目し、両者の妥当性を比較検討する実験を計画した。実験では10種類の候補から刺激的と評価された上位3種類の映像を実験条件とし、順に興味、悲しみ、笑いの条件と定義した。加えて、もっとも刺激的でないと評価された映像を統制条件とし、合計6群の実験参加者(計230名)に視聴させた。このフィールドRNG実験の結果、実験条件の3つの映像視聴時の累積カイ二乗値統計量はいずれも有意でなかったが、3つ全てを総計すると有意となった。一方、3つの実験条件に統制条件の結果を全て含めると累積カイ二乗統計量は有意でなくなった。これらの結果は感情説を支持すると考えられた。なお、いずれの実験条件においてもStouffer’s Zの値に偏りはみられず、感情の種類に特有のRNG出力の偏りは明らかにならなかった。最後に、今後の研究上の課題が議論された。
Keywords:
MMI、感情、フィールドRNG/REG、PK

【大会長講演】
(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.34
東洋・西洋の差について―心理、哲学、宗教、科学、環境問題

伊藤 公紀
国際生命情報科学会(ISLIS)副会長
横浜国立大学 大学院 環境情報研究院
要旨: 最近の社会心理学的や脳科学の結果によれば、西洋人と東洋人の外界認識様式の差は大きい。例えばニスベットは著書『木を見る西洋人、森を見る東洋人』に、「西洋人の視野は望遠レンズ、東洋人の視野は広角レンズ」と書いている。古代ギリシャと古代中国に起因するその差は、さまざまな場面で発現している。分離・分析・理想を特徴とする西洋的認識は、西洋キリスト教の三位一体、個人主義、近代科学、人間中心環境主義などを生み、今日のさまざまな矛盾や環境問題に結びついた。融合・総合・現実を特徴とする東洋的認識は、このような問題を解決する可能性を持つ。地球温暖化問題や太陽風-地球気候連関などの例について考察する。
Keywords:
東洋、西洋、心理、哲学、宗教、科学、環境問題、社会心理学、脳科学

【会長講演】
(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.35
世界観の反コペルニクス的転回:宇宙のアノマリーとしての自己と他者

渡辺 恒夫
国際生命情報科学会(ISLIS)会長
東邦大学 教授
要旨: 近代科学では「科学性=客観性」であるが、客観性の要件である公共性・再現可能性ある観測とは、「誰でもよい誰かによる」観測に他ならない。誰でもよい誰かによる観測データで造られた科学的世界の中の人間とは、「誰でもよい誰か」であって、この私でもなければ、あなたでもない。故に「自己」と「他者」は、科学的宇宙像の中での変則事象として、しばしば驚愕を以って体験されざるを得ない。本講演では、著名な科学者らに見るそのような驚愕体験を分析し、意識の超難問として定義し、その解決のために、独我論的な自己―他者構造を世界の基本単位として世界像を構成し直すという、反コペルニクス的転回の道を唱える。
Keywords:
公共性・再現可能性ある観測、無人称宇宙、意識の超難問、独我論的体験、モナド

【理事長報告】
(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.36
国際生命情報科学会 (ISLIS )の16年半と「潜在能力の科学」の推進

山本 幹男
国際生命情報科学会 (ISLIS) 理事長・ 編集委員長1
国際総合研究機構 (IRI) 理事長2
超党派 国会議員連盟 人間サイエンスの会(NS) 世話人代表2
(東邦大学 理学部 訪問教授)
要旨: 国際生命情報科学会(ISLIS:イスリス)の1995年創立から16年半の活動と人間等の「潜在能力の科学」の推進について報告する。設立趣意は、物質中心の科学技術から、こころや精神を含んだ21世紀の科学技術へのパラダイム・シフトのための、実証的科学技術研究の発展、「潜在能力」等の不思議現象の原理解明、「潜在能力」の開花により、健康、福祉、教育と社会および個人の心の豊かさを増進させ、自然と調和した平和な世界創りに寄与する事である。創立以来、「生命情報科学シンポジウム」を年2回、計33回主催し、国際学会誌Journal of International Society of Life Information Science (Journal of ISLIS )を年2号定期発行し続けてきた。2002年には「潜在能力の科学国際シンポジウム」を、2004年には韓国ソウルで「Mind Body Science国際会議」を主催した。2004年には単行本「潜在能力の科学」を発行した。第7回サイ会議が統合的スピリティスト大学,クリチバ, ブラジル,とISLISの共催にて, 2011年8月にブラジル・クリチバ市にて開催された。この間不思議現象「潜在能力」の存在の科学的実証には多くの成果を挙げた。現在世界の11カ所に情報センターを、約15カ国に約270人の会員を有す。近年毎夏主催の合宿は、2012年8月には富士山麓で6回目を開催する。
Keywords:
国際生命情報科学会、ISLIS、心、意識、精神、スピリチュアル、代替医療、CAM、統合医療、IM、免疫、自然治癒、健康、潜在能力、能力開発、自己啓発、美容、催眠、瞑想、気功、ヨーガ、超常現象、超能力、超心理、臨死、死後生存、世界像、世界観、不思議

[研究発表論文] Without Peer-Review

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.41)
蛍光測定によるヒーリングパワーの定量測定法

小久保 秀之1,2、山本 幹男1
1国際総合研究機構 生体計測研究所
2明治大学 意識情報学研究所
要旨:
筆者らは2006年以来、ヒーリングパワーの定量測定法の開発に取り組んでおり、これまでにキュウリ切片(生体センサ)から生じる極微弱生物光を使ったバイオフォトン測定法と生成ガスを使ったガス測定法の2種の開発に成功した。本研究は、キュウリ切片の切断面に蛍光物質が生成されることを利用する蛍光測定法の開発である。ガス測定法で使用した試料に紫外線を照射しながら、蛍光をバンドパスフィルタを使って分光測定した結果、562nm帯においてヒーリング実験とブランク実験の蛍光J値に統計的有意な差が見られた(p = 0.005、両側、t検定、n = 32)。また、ヒーリング実験ではガス測定と蛍光測定のJ値に負の有意相関があった。冬場のキュウリは反応性が悪いため、バイオフォトン測定法・ガス測定法ではヒーリング効果の検出が困難であったが、蛍光測定法を使えば通年測定が可能と考えられた。
Keywords:
生体センサ、白いぼキュウリ、蛍光、非接触ヒーリング、ガス測定法、J値

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.49)
岡田茂吉の動的な健康観に基づく新たな健康度指標の開発と岡田式健康法の継続による変化

津田 康民1, 和泉 充浩2, 安田 豊顕2藤井 淳史2, 中島 宏平2
1(財)エム・オー・エー健康科学センター
2MOA インターナショナルサポートセンター 浄化療法育成研究チーム
要旨:
岡田茂吉の健康観に基づく新たな健康度の評価尺度を開発した。また、6段階の凝り評価用ゴムも開発した。そして、継続した岡田式健康法の実践による変化を凝りとともに測定し、その変化をQOL、Spirituality等と比較した。
Keywords:
view of health, stiffness, health degree, Okada health and wellness program

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.55)
医療ヨガによる外気功の簡単習得法について

橋本 和哉
医療法人 春鳳会 はしもと内科外科クリニック
要旨:
私のクリニックでは患者さんの機能維持や症状改善のため、血液、リンパ液の流れ、脊髄の矯正を目的に伝統的なヨガをアレンジした動き(医療ヨガ)を指導しているが、それにより外気功ができるかを検討した。例数は8名で、医療ヨガを行うことにより、皮膚表面温度が変化し、気を通したとき腕や姿勢の安定性が増し、AMI測定によるBP値が増強し、検者が自覚的に、また気を受けた他者も気感を認めた。このことから1回の医療ヨガを行うことでも外気功ができるようになると考えられた。
Keywords:
医療ヨガ、外気功、簡単習得法

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.61)
刺激に起因する生体反応のカオス解析   
足達 義則
中部大学経営情報学部

要旨:
我々は常に各種刺激にさらされており、これから様々なストレスを受けている。ストレスは自律神経の働きに影響を及ぼし、長期間のストレスが病気の引き金になると言われている。本研究では、数種類の精神作業負荷、運動負荷が与えられたときに生じる自律神経の働きの変化を、心拍数、LF/HF等の値から測定し、リラックス度の指標となる副交感神経の働きを推測し、その特徴をウェーブレット解析で検討した。その結果、好きなことをすることが必ずしもリラックスにつながらないこと、座禅やクラシック音楽、自然の中での散歩がリラックスに適していることを示した。
Keywords:
刺激、ストレス、LF/HF、カオス解析、ウェーブレット解析

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.70)
各種ヒーリング実施中の生理変化

河野 貴美子
国際総合研究機構 生体計測研究所
要旨:
筆者は以前からリラクゼーションとは脳のどのような状態か、脳波による検討を行ってきた。ある一定の条件下であれば、リラックス状態を波の大小で評価することは可能であるが、さまざまなリラクゼーション法実施中に波が増大するとは限らない。さらに、単なるリラクゼーションだけではない、積極的な癒し効果が期待されるヒーリングにおいては、いかなる生理指標を用いて、どのような解析を行なったらその効果を明らかにできるであろうか。精神的・肉体的ストレス度や体調回復度合いを考慮に入れつつ、各種生理計測を試みているが、本報告では筆者が数多く検討している脳波を中心に、心電、呼吸、皮膚電気活動等による計測結果を加味して、各種ヒーリングにおける生理変化を考察する。


Keywords:
リラクゼーション, ヒーリング, 脳波,波、心電図, 呼吸, EDA, 自律神経, LF/HF

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.71)
「順式腹式呼吸法」が心拍変動と不整脈と自律神経に及ぼす機能評価24例

曽 紅1,2、川島徳道1
1 桐蔭横浜大学大学院、帯津三敬病院養生塾ミトコンドリア細胞呼吸学園
2桐蔭横浜大学先端医用工学センター

要旨:
本研究は、順式腹式呼吸法が不整脈と心拍変動と自律神経に及ぼす機能評価を目的に24例を対象とし、呼吸法前後の変化を指尖脈波解析器で計測した。結果、順式腹式呼吸法には、心拍変動の活性効果、不整脈の軽減解消効果、低下したLF/HF値の増加、自律神経活動のバランスを整える効果があることがわかった。
Keywords:
順式腹式呼吸法、心拍変動、不整脈、自律神経、指尖脈波解析

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.79)
「食」の本質はストレス改善にあり   

橋爪 秀一
Idea-Creating Lab
要旨:
不随意神経である自律神経の制御下にある唾液中のクロモグラニンA を指標に用いた精神的ストレス改善効果と種々食品の売上高との間には強い正の相関が認められたことから、我々は食品を潜在意識により購入すること及び精神的ストレス改善効果が高い製品ほど、売上高も高いことを明らかにした。これは、また、ヒット商品は自律神経制御下のストレス改善効果を高めることにより達成できることを示している。食品には、一次から三次機能まであるが、一次機能(栄養機能)も、栄養不足は生体或いは細胞にストレスが加わると考えられることから、ストレスと強く関係しており、二次機能(嗜好機能)も、好き嫌いは快(低いストレス)・不快(高いストレス)に通ずることから、ストレスと深い繋がりがある。三次機能(生体調節機能)は、疾病予防機能が最重要機能と考えられるが、疾病はストレスが引き金となると言われていることから、これもストレスと強い関係がある。従って、食品の一次から三次機能に共通するキーワードはストレスであり、我々は「食」の本質はストレス改善効果にあることを提案したい。
Keywords:
クロモグラニンA、精神的ストレス、ストレス改善効果、売上高、ヒット商品

<ミニ・シンポジウム> 死・思想・健康〜スピリチュアリティへの視点〜

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.84)
スピリチュアリティと幸福度    

大門 正幸
中部大学
要旨:
Various studies in such fields as positive psychology, psychosomatic medicine, and medical sociology have increasingly shown that how persons looks at the world around them and how they look at their life greatly affect their mental as well as physical health. In this study, the results of the multinational surveys of people’s religious beliefs conducted by the International Social Survey Programme are the relationship between the level of happiness persons feel and their beliefs concerning the spiritual notion of the “survival of consciousness after death” is considered.

Keywords:
spirituality, level of happiness, life after death, religious belief, paranormal phenomena

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.88)
「五大」思想の周縁   

岡本 聡
中部大学
要旨:
「五大」とは、世に遍満し、万有を作る五つの元素。地水火風の「四大」に「空」を合わせたものをいう。「大」は梵語の意訳で、元素の意である。「空」を中心とする「四大」という死生観があった。昨年は、古典文学と「五大」という視点で、芭蕉を中心とした古典文学の中にどのように「五大」思想が取り込まれているのかという事を発表した。本発表では、前回の発表でふれられなかった『伊勢物語』の古注釈や、古今伝授、あるいは心敬の連歌論『ささめごと』などの記述を中心におきながら、それがティク・ナット・ハンなど現代の仏教徒が書いたものといかに関わっているかという事について触れていきたい。前回も触れたが、米国オークリッジ国立研究所が行った放射性同位元素分析によれば、一年間で生有体を構成する原子の98%が入れ替わるという事である。この事から考えると、「四大」が「空」を中心に循環するという思想は理にかなったものという事になる。本発表では、「五大」思想を中心におき、それが日本の古典文学と現代に息づいている仏教とにいかに描かれているかという事を検討していきたい。

Keywords:
five elements, reincarnation hypothesis, Japanese classical, literature, Buddhism, quantum mechanics

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.94)
スピリチュアリティと健康をめぐる科学的研究   

杉岡 良彦
旭川医科大学
要旨:
過去において宗教と医療は密接な関係にあったが、科学の発達は両者の関係を大きく変えた。しかし最近、宗教やスピリチュアリティの健康への影響が科学的に評価されている。例えば、教会への礼拝出席と寿命の関係、宗教性がうつ病からの回復や心疾患に与える影響など、その研究は多岐にわたる。こうしたスピリチュアリティと健康に関するこれまでのデータを具体的に紹介すると共に、その作用メカニズム、および科学的方法論の本質と限界をも考え、今後のこの研究領域の課題についても考察する。

Keywords:
spirituality, medicine and religion, scientific research, view of human, dimensional anthropology

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.106)
家庭における命の教育とその実際   

林 和枝
中部大学 生命健康科学部
要旨:
Death Education(以下、いのちの教育とする)という概念が日本に導入され、20年以上が経つ。現在、学校教育におけるいのちの教育に関しては、取り組みの実際や教育効果の報告、教育内容の吟味に関する研究など数多く報告されている。それに反して、家庭における子どもに対するいのちの教育に関する研究は少ない。しかし、子どもの成長・発達のために果たす家庭の役割の大きさを考えると、家庭におけるいのちの教育の発展は、重要な課題であろう。本発表では、筆者が行った母親を対象とした調査より、母親のいのちの教育に対する意識とその実際について報告する。またこれらに関連して、死別による子どもの悲嘆に対する母親のケアについても報告したい。

Keywords:
いのちの教育、家庭教育、意識調査、子どもの死の概念、悲嘆ケア

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.112)
胎内記憶保有率調査の比較     

池川 明
池川クリニック
要旨:
2002-2003年に3601名の保育園に在籍する園児の保護者に対するアンケート調査を行い、園児では33.0%、保護者には1.1%に胎内記憶があるという結果が出た。その後、いくつかの調査が行われているので、その調査結果を比較してみた。
 結果を比較できたのは、講演会を行った時に参加者に配布したアンケートによるものが5件、インターネットのサイトでのアンケートによるもの4件、独自のアンケート調査が3件である。
 それぞれの調査の母集団、調査方法などが異なるため、同じように比較することは困難であるが、胎内記憶の保有率だけをみると、6歳以下は12.2-69.3%とばらつきがあるが、20%台が最も多かった。小学生は4.1%-9.0%、中学生は0-3.4%、高校生は3%、成人では0.6%であった。 数値にばらつきはあるものの、池川の先行研究と同様に年齢とともに記憶の保有率は減少する傾向を示している。
 今後の研究の方向性なども併せて報告する。


<ミニ・シンポジウム> 身体に働きかけると、脳が活性化する:セロトニン神経の役割

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.113)
座禅とウォーキング記憶の検証    

有田 秀穂
東邦大学 医学部 統合生理学
要旨:
セロトニン神経を活性化するには、呼吸・歩行・咀嚼のリズム運動が有効であることが動物実験で確立されている。それを人間の日常的な営みに当てはめると、坐禅やヨガの呼吸法、ウオーキングやジョギングさらには自転車漕ぎ、ガム噛みなどが、セロトニン神経を活性化すると予測される。私たちはヒトの全血中のセロトニン濃度の変動をこれらリズム運動の前後で比較し、確かに脳内セロトニン分泌が増えているという結果を得た。そのようなセロトニン活性化が起こる状況では、覚醒(開眼)時であるにも関わらず、脳波にα2成分が出現するようになり、大脳皮質の変容が出現し、POMS心理テストで、ネガティブな気分尺度の改善が認められた。多チャンネル近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を実施すると、前頭前野内側部の血流増加が認められた。この領域は、直感・第六感・共感などに関係することが知られているので、直感や感性を上げる効果が予想された。

Keywords:
セロトニン、前頭前野、脳波、坐禅、歩行運動

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.114)
セロトニン神経から見る自発的幸福と音の力    

喜田 圭一郎1、有田 秀穂2
1サウンドヒーリング協会
2東邦大学医学部 統合生理学医学博士
要旨:
不安を感じやすくなるうつ病、近年世界中に広がるうつ病(1. 2億人/2008)の原因の一つと考えられるセロトニン不足。この血液中濃度を測定し、音の振動エネルギーを負荷する前、直後、30分後でその変化を探ってみた。その結果、音の振動を負荷する前の平均値(n7)で200.01ng/ml,実験直後,191.13ng/ml, 30分後204.47ng/ml と変化した。外の何かを得ると幸福になれるという観念に捕われている現代人にとって、音の振動は内からの自発的幸福を手に入れる方法として未知の可能性を秘めている。

Keywords:
自発的治癒、セロトニン神経、体感音響、サウンドヒーリング

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.115)

フラダンスの身体・心理両面における効果    

原 久美子1、有田 秀穂2
1循環器中町クリニック
2東邦大学医学部 統合生理学医学博士
要旨:
フラダンス(正式にはフラhula )はハワイの伝統舞踊であるが、日本においても非常に愛好者多い人気のカルチャーである。
当院では、特別な用具を必要とせず屋内で行えるフラを、中高齢者の運動プログラムの一つとして取り入れ、その身体面、心理面の両面に対する効果を検証したので報告する。
対象は平均年齢55歳の女性33名で、院内のスタジオで週2〜4時間のレッスンを2年間継続した。参加前と比較して2年後、体力測定においては有意に下肢の筋力増強効果を認めた。また、メディカルチェックの結果から、生活習慣病予防効果も期待できることが示唆された。心理面においては、1時間のレッスンの前後に行った気分プロフィール検査(POMS)において、緊張、抑うつ、怒り、疲労、混乱の各スケールがレッスン後に有意に下がり、活気の尺度が有意に上がった。このPOMSの結果にみられたフラの心理効果の少なくとも一部は、セロトニン神経活性化効果によるものと考えている。

Keywords:
Hula、筋力増強、内臓脂肪、POMS、セロトニン神経活性化


<ミニ・シンポジウム> 「森になる」における超越的な与える喜びの実践

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.116)
「森になる」実践における愛他行動促進と自己超越への気づき   

尾崎 真奈美
相模女子大学 人間心理学科
要旨:
本シンポジウムの目的は、「森になる」運動、つまり匿名的な樹木葬を推進する運動が、どのように自己超越的な気づきに貢献するか提示することである。すなわち1。背景と現状、問題提起(河野)2。非人称の観点からの意義(甲田)3。感謝と愛他行動の社会心理学(小野寺)をふまえて、4。生死を超越したスピリチュアリティの発現としての意義をポジティブ心理学の文脈から記述する(尾崎)。演者は第一に、この運動が単に環境学的、死生学的に意味のあることにとどまらず、個人のポジティブ感情や人生満足度を増進させ、意味ある人生として究極の幸福感(ユーダイモニア)に寄与することを示す。第二に、この実践を通じて、個人を超越した感謝のお返し行動の連鎖が、普遍的な愛他性を促進する可能性をポジティブ感情の拡張形成理論から説明する。

Keywords:
スピリチュアリティ、インテグラル、幸福感,ユーダイモニア、拡張形成理論、愛他行動、自己超越

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.117)
「森になる」- 気づきとしての自己超越    

河野 秀海
浄土宗少僧都、日本ヨーガ療法学会
要旨:
「森になる(心の森をのこす会)」とは、墓碑を建てる代わりに樹木を植え、自らが木となり森となって地球環境と子孫を護ろうと提唱する運動である。それは、環境破壊に対する具体的な方策を提示することが期待される運動でもある。と同時に、戦後失われた地縁、血縁に代わるコミュニティを創造し、つながりを取り戻す試みでもある。さらに、樹木葬という具体的な実践を通して、個人意識や宗教思想に新たな枠組みを付与しようとする精神運動とも言える。それは、二元対立を超えた新たな枠組みを模索する実践哲学とも成り得ると考える。つまり、近代西洋と東洋古来のあり方を統合する試みなのである。すなわちこの運動は、人類を頂点に自然を資源とみてコントロールしようとする在り方と、天地を崇め自然に服従する在り方を統合し、人間の営為そのものが環境と美しく調和してゆく契機となりうる。このように「森になる」運動は、自然との平和共存的実践にとどまらず、自己超越的気づきを促し、愛他的精神を鼓舞し、人生における高潔なあり方を促進すると期待される。

Keywords:
森になる、精神運動、自然、実践哲学、樹木葬

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.118)

非人称的アプローチのる「森になる」の実践    

甲田 烈
相模女子大学 人間学科
要旨:
本研究の目的は、匿名的な森林葬の推進運動である「森になる」に向けて、有用性のある哲学的原理を提示することである。この目的のためにメタ理論としての非人称的アプローチを導入した。本論文では第一に、この理論の構成要素であるインテグラル理論における四象限と構造構成主義における関心相関的選択について説明した。四象限とは、あらゆる事象は、主観的側面、客観的側面、間主観的側面、間客観的側面という四つの側面から見る事かできるということであり、関心相関的選択とは、あらゆる認識論・理論・方法論は研究者・実践家による関心や目的に応じて選択できるという原理である。この2つの思考法によって、実践者は自他の関心を対象化すると同時に積極的に他者の視点からも学ぶ可能性が担保される。第二に、非人称的アプローチを適用した樹木葬運動の理論モデルが示された。

Keywords:
非人称的アプローチ、インテグラル理論、四象限、構造構成主義、関心相関的選択

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.118)

感謝体験の意識化がポジティブな感情と愛他的行動に与える効果    

小野寺 哲夫
財団法人ふくしま自治研修センター
要旨:
ポジティブ心理学のポジティブ感情と感謝研究の知見に基づき、感謝体験の意識化(喚起)を促す方法として感謝クエスチョンを考案し、その気分や感情状態、原因帰属に与える影響について検討した。被験者は326名の大学生で、質問紙法で実施された。最初に気分状態が測定され、「リストラされた父親が家族に暴力を振う」という短い物語1を読んだ後、1回目の帰属項目に回答した。その後、実験刺激として、感謝クエスチョンなどのいずれかがランダムに施行され、再び実験操作が加えられた物語2を読んだ後、2回目の帰属評価をし、最後に、再び気分状態が測定された。分析の結果、感謝クエスチョンには、ネガティブ感情を抑制し、ポジティブ感情(ポジティビティ)を増加させる効果があることが示された。マカロウやエモンズ(2001)らは、「感謝」には他人やそれ以外のものへの愛他的行動を促進させる機能があるとした。従って、感謝体験の喚起・意識化によって、ポジティブ感情としての感謝の念に満たされた人は、困っている他人のみならず、森や大地といった自然への愛他的行動、ひいては、樹木を植え、自らが木となり森となって地球環境を護る「森になる」精神運動を推進していく上での精神的基盤になるのではないかと考えられる。

Keywords:
感謝クエスチョン、愛他的行動、ポジティブ感情の拡張-形成理論、原因帰属


<発表とワークショップ>

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.124)
新しい医療を求めて(3) 婦人科疾患:東洋医学からの新しい視点によるアプローチ    

竹中 茂
新川鍼灸整骨院
要旨:
子宮、卵巣、膣、はリンパ本幹と繋がっており、リンパ腺、リンパ節は解毒装置であり、リンパ腺、リンパ節が詰ると、解毒機能が低下し子宮、卵巣の臓器内リンパ腺と臓器本体が肥大、膨張、硬化、膿腫、圧痛(強)となり、子宮筋腫、子宮癌、子宮頸痛、卵巣膿腫、子宮内膜症、などの疾患として表われてくるのです。
リンパ本幹、リンパ腺、臓器内リンパ腺という視点からの治療により、手術しなくても治癒に導くことが可能となるのです。

【報告】
(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.125
移動する放射性物質 -阿武隈川水系における放射能汚染調査

桂川 秀嗣
東邦大学 理学部 心と生命の環境学研究センター

要旨:
昨年3月11日の福島第一原子力発電所の事故によって山や森に降り積もった放射性物質は、どこへ移動するのだろうか。私たちは川の源流から、川の流域に沿って、土や川の水に含まれる放射性セシウムを調べることでその行く先を追跡している。
放射性セシウムが雨や雪解け水で森から川へ流れ出るとすれば、それらは私たちの気づかない場所に溜まり、新たなホットスポットを作り出すかもしれない。さらに、除染の水が川を汚染することも心配される。何をきっかけにどのくらいの量の放射性セシウムが川に流れ、それはどこへ行くのか、われわれは 阿武隈川とその支流の流域で放射能汚染調査を行っている。

Keywords:
原子力発電所、放射性物質、ホットスポット、放射能汚染、阿武隈川


【報告】
(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.30, No.1, p.126
ブラジルでの第7回サイ会議 (ISLIS 共催)および21世紀初頭の特異現象研究の傾向

小久保 秀之
国際生命情報科学会 (ISLIS) 常務理事・執行編集委員
国際総合研究機構 (IRI)研究部長
要旨:
2011年8月にブラジル・クリチバ市にて、ISLISと統合的スピリティスト大学との共催で、第7回サイ会議が開かれた。同会議は南米地区の国際会議で、今回は第54回国際超心理学会大会と第6回変性意識の旅と一緒に開催された。本報では、サイ会議の概要を紹介するとともに、21世紀初頭の特異現象研究の世界的潮流として1) 特異心理学の活性化、2) 予感(予知)実験の波紋、3) ヒーリング研究の拡大を取り上げる。

Keywords:
研究動向、特異心理学、予感、予知、ヒーリング研究、超心理学


International Society of Life Information Science (ISLIS)
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Last Modified: April 4, 2012