生体放射計測グループのプロジェクト活動(1年目)

科学技術庁の5ヶ年プロジェクトの1年目の結果

 科学技術庁 放射線医学総合研究所において、1995年9月より、科学技術振興費(5年間で1億円)による5ヶ年プロジェクト、官民特定共同研究「多様同時計測による生体機能解析法の研究」がスタートしました。
 初年度、私たちは以下のテーマを含めて多くの実験を行いました。

  1. 感覚遮断状態での対人遠隔作用実験
  2. 感覚外情報伝達に関する脳波測定実験
  3. 下意識に於ける未知情報伝達に関する聴覚誘発電位実験
  4. 感覚外情報伝達に関する脳波測定実験(そのII)
  5. 感覚遮断状態での対人遠隔作用実験(そのII)
  6. 動物培養細胞に対するヒトの非接触作用効果検出実験系の検討

→2年目の研究


1年目の研究

1.感覚遮断状態での対人遠隔作用実験 1)
 気功の熟練者による遠当てと呼ばれる現象が暗示によるものであるかないかを確認するために、感覚伝達を遮断したビルの2階と5階の2部屋に気功師とその弟子を配置し、遠当てを行ってもらい気功師側の作用時刻と弟子側の反応時刻を記録した。1秒以下の時間差で時刻が一致する場合が16試行中に6回あった。このようなことが偶然に起こる確率は 0.0058 であり、十分に有意な一致を示していると言え、未知の伝達機能の存在が示唆される。

2.感覚外情報伝達に関する脳波測定実験 2)
 情報送信者と情報受信者を感覚伝達を遮断した2部屋に配置し、感覚外情報伝達を試み、その時の受信者の脳波を測定した。感覚外情報送信は継続した2分間の内の無作為に選ばれた前半または後半において行い、受信者はその送信時間帯と送信内容を推測する。20回の試行の結果、受信者は送信時間帯を統計的に有意に推測することができなかったが、感覚外情報送信時と非送信時の脳波のα波平均振幅の間には統計的に有意な差が見られ、下意識における感覚外情報伝達の存在が示唆された。

3.下意識に於ける未知情報伝達に関する聴覚誘発電位実験 3)
 本実験は、4つの音を聞きその4音の中からコンピュータが事前に無作為に公開で選定していた1音を識別するという試行を一般の被験者に繰り返させ、その結果、被験者が通常感覚では選定されていた音を有意に識別することができない場合でも、被験者の脳は選定されていた音を識別している可能性があるという事を、選定されていた音を聞いた時の被験者の聴覚誘発電位ピーク潜時の有意な変位の存在から示し、人間の下意識に於ける未知の情報伝達の存在可能性を示唆する。

4.感覚外情報伝達に関する脳波測定実験(そのII) 4)
 情報送信者と情報受信者を感覚伝達を遮断した2部屋に配置し、感覚外情報伝達を試み、その時の両者の脳波を測定した。感覚外情報送信は継続した2分間の内の無作為に選ばれた前半または後半において行い、受信者はその送信時間帯と送信内容を推測する。20回の試行の結果、受信者は送信時間帯を統計的に 有意に推測することができなかったが、感覚外情報送信時と非送信時の脳波のα波平均振幅の間には統計的に有意な差がみられ、下意識における感覚外情報伝達の存在が示唆された。その感覚外情報伝達は、送信者の脳での反応直後に完了するものではなく、受信者の脳で、まず、後頭野から頭頂野にかけての反応があり、次に、右前頭野での反応が起こるという経過を経て構成される。

5.感覚遮断状態での対人遠隔作用実験(そのII) 5)
 「遠当て」と呼ばれる現象では、気功熟練者が非接触で離れた相手を激しく後退させる。我々は、両者間の感覚伝達を遮断した無作為・盲検実験で、暗示等の心理効果を取り除いた後でも、本現象が統計的有意に生起することを、第1回生命情報科学シンポジウムで発表した(初報)。本報では、本現象に関し、さらに詳細な次の3実験を行い、前回の報告を支持する結果を得た。未知な情報伝達機構の存在が示唆される。
 実験1では、通常の感覚伝達を遮断したビルの1階と4階の2部屋に発気する気功師(送信者)と弟子(受信者)を配置し、遠当て時の送信者の発気動作時刻と受信者の反応動作時刻を記録した。時間差5秒以内で両者が一致したものが、49試行中16試行あり(期待値 7.88 試行)、統計的に高度に有意であった(危険率 0.0008)。
* ビデオ動画「遠当て」 [AVI file: 621k] 実際の実験の記録映像です。
 実験2では、遠当てによる通常感覚伝達遮断状態での情報伝達を試み、その時の受信者の脳波を測定した。発気動作(送信動作)は、1分間内の無作為に選ばれた一瞬において行われる。57試行の結果、送信動作時と非送信動作時の受信者脳波のα波平均振幅の間に、右前頭部で統計的に有意な差が見られた。さらに、遠当てにおける通常感覚伝達遮断状態での情報伝達において脳の右前頭部が関与している可能性が示唆された。
 実験3では、送信者と受信者が同室にいる場合と別室にいる場合について実験した。送信者と受信者の遠当て時の脳波を同時に測定し、両者の脳波の遠当て前後にわたる意識変化を複数の指標を用いて推定した。両者とも安静時より遠当て時の方がリラックスしている場合と同様の、また遠当て時にはイメージ想起を行っている場合と同様の、指標傾向が見られた。さらに、遠当て時のβ波平均振幅トポグラフに両者間においてパターン類似性がみられた。

6.動物培養細胞に対するヒトの非接触作用効果検出実験系の検討 6)
 様々な疾患の患者に対して非接触作用効果を及ぼし、疾患を治癒または治癒を補助する能力を有するとされる技術者の存在は古くから議論されているが、その実態は未だに全く不明であり、その存在を疑問視する研究者が多い。われわれは治療目的に使用可能な非接触作用効果が実在すると仮定すると、薬剤や電離放射線の処理により人為的に傷害を導入したヒト培養細胞のコロニー形成率に及ぼす影響を定量的に調べることにより、非接触作用効果を検出できる実験系の開発が可能であると考えた。予備実験の結果、細胞致死作用を及ぼす薬剤 として知られるG418処理による傷害からの回復には非接触作用による細胞増殖回復効果は検出できなかったが、X線照射により放射線障害を導入した細胞において非接触作用の効果による可能性が示唆される細胞増殖回復効果がわずかながら検出された。

文献
1) Yamamoto M., Hirasawa M., KAWANO K., YASUDA N. and FURUKAWA A.: Journal of International Society of Life Information Science, 14, 97-101, 1996.
2) HIRASAWA M., YAMAMOTO M., KAWANO K. and FURUKAWA A.: Journal of International Society of Life Information Science, 14, 43-48, 1996.
3) HIRASAWA M., YAMAMOTO M.: Journal of International Society of Life Information Science, 14, 32-37, 1996.
4) HIRASAWA M., YAMAMOTO M., KAWANO K., FURUKAWA A. and YASUDA N.: Journal of International Society of Life Information Science, 14, 185-195, 1996
5) YAMAMOTO M., HIRASAWA M., KAWANO K., KOKUBO H., KOKADO T., HIRATA T., YASUDA N., FURUKAWA A. and FUKUDA N.: Journal of International Society of Life Information Science, 14, 228-248, 1996.
6) YAMAUCHI M., SAITO T., YAMAMOTO M. and HIRASAWA M.: Journal of International Society of Life Information Science, 14, 266-277, 1996.


→2年目の研究

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Last Modified: July 1, 1999