International Society of Life Information Science (ISLIS)

Journal of International Society of
Life Information Science (ISLIS)

28巻、1号、2010年3月号

要旨 


[理事長報告]

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.9)
国際生命情報科学会(ISLIS)の14年半と「潜在能力の科学」の推進

山本 幹男
国際生命情報科学会 (ISLIS) 理事長・編集委員長1、
国際総合研究機構 (IRI) 理事長2(日本、千葉市)
東邦大学 理学部 訪問教授
要旨:
 国際生命情報科学会(ISLIS)の1995年創立から2010年春までの14年半の活動と「潜在能力の科学」の推進について報告する。設立趣意は、物質中心の科学技術から、こころや精神を含んだ21世紀の科学技術へのパラダイム・シフト(枠組革新)のための、実証的科学技術研究の発展を通じて健康、福祉、教育と社会および個人の心の豊かさを増進させ、自然と調和した平和な世界創りに寄与する事である。創設以来、生命情報科学シンポジウムを年2回、計29回主催と国際学会誌Journal of International Society of Life Information Science (Journal of ISLIS )を年2号発行してきた。2002年には「潜在能力の科学国際シンポジウム」を、2004年8月には韓国ソウルで「Mind Body Science国際会議」を主催した。2004年には単行本「潜在能力の科学」を発行した。現在世界の9カ所に情報センターを、約10カ国に約270人の会員を有す。2010年8月には富士山近くで合宿をする。

Keywords:
International Society of Life Information Science (ISLIS ), Journal of International Society of Life Information Science, publication of a book, human potential science, mind body, parapsychology, qigong, complementary and alternative medicine (CAM), integrative medicine

[原著論文] Peer-Reviewed

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.14)
双極性障害における前視床脚の断面積減少:線維追跡法による研究

池田 暁史1,鬼頭 伸輔1,鄭址 旭2,小林 哲生2,古賀 良彦1
1杏林大学医学部 精神神経科学教室(東京,日本)
2京都大学大学院 工学研究科 電気工学専攻(京都,日本)
要旨:
大脳白質の統合異常が双極性障害の病理に関与しているという仮説がある。前視床脚は視床と前頭葉をつなぐ神経線維束であり、双極性障害の認知障害に関連している可能性がある。本研究でわれわれは、11名の双極性障害患者および15名の健常対照群から拡散テンソル画像を入手し、前視床脚の線維追跡を行うことでトラクトグラフィを作成した。前視床脚の断面積 (CSA)、拡散異方性 (FA)、みかけの拡散指数 (ADC) を計測し、患者群と健常群とを比較した。健常群と比べ、患者群では右および左の前視床脚において断面積が有意に小さかった。ADCとFAとに関しては、患者群と健常群とで有意さは認められなかった。両群共に、CSA、FA、ADCは右よりも左の前視床脚の方が有意に大きかった。これらの所見は、双極性障害における、視床と前頭葉との間の白質の統合の乱れを示唆している可能性がある。両側性の神経発達不全が、双極性障害の病理と関連しているかもしれない。
Keywords:
anterior thalamic peduncle, bipolar disorder, diffusion tensor imaging, fiber tracking, white matter

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.23)
Changing Definitions of Meditation- Is there a Physiological Corollary? Skin temperature changes of a mental silence orientated form of meditation compared to rest

Ramesh MANOCHA1, Deborah BLACK2, David SPIRO3, Jake RYAN4 and Con STOUGH4
1 Barbara Gross Research Unit, Royal Hospital for Women (Randwick, Australia)
2Faculty of Health Sciences The University of Sydney, (Sydney, Australia)
3 Institute of Psychiatry, King’s College London (London, UK)
4 Centre for Neuropsychology, Swinburne University
Abstract:
[Objectives] Until very recently, the U.S. National Center for Complementary and Alternative Medicine (NCCAM) defined meditation as “a conscious mental process that induces a set of integrated physiological changes termed the relaxation response”. Recently the NCCAM appears to have reviewed its understanding of meditation, by including a new central feature: “In meditation, a person learns to focus his attention and suspend the stream of thoughts that normally occupy the mind”, indicating a shift from a physiological (“relaxation-response”) to an experiential (suspension of thinking activity) definition, more in line with traditional eastern understandings. We explore the physiological implications of this paradigmatic shift.
[Design] A controlled, observational study.of acute physiological changes. N=26. Participants were asked to either meditate or rest for 10 minutes.
[Settings/Location] A temperature controlled room at Swinburne University’s Psychophysiology Laboratory, Melbourne.
[Subjects] 16 meditators proficient at a mental silence orientated form of meditation (Sahaja yoga, SYM) and 10 non-meditators with an interest in meditation.
[Interventions] A mental silence orientated form of meditation (Sahaja yoga, SYM) was compared to rest.
[Outcome Measures] Palmar skin temperature and heart rate.
[Results] Throughout the meditation period mean ST of the SYM group decreased while that of the Rest group increased. After ten minutes of meditation, 13 of the 16 meditators manifested a reduction in ST compared to baseline whereas 7 of the 10 participants in the control group manifested an increase compared to baseline. Chi-Square tests showed that the difference between the two groups was significant (p=.003). Heart rate changes however did not differ between the two groups.
[Conclusions] The study suggests that the experience of mental silence and rest are not psychophysiologically identical despite the fact that they are overtly similar. Implications of this, and need for further evaluation, are discussed.
Keywords:
meditation, relaxation, arousal, skin temperature, controlled trial, mental silence, sahaja yoga, definition
[Case Study] Peer-Reviewed

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.31)
Effects of Reiki on Atherosclerosis

Shan WU 1,2, Li NIU2, Jianfang WU1 and Chongmao GAO3
1Medical Research Center, Medical College of Jiujiang University (Jiangxi, P. R. China)
2Department of Pathophysiology, Medical College of Jiujiang University (Jiangxi, P. R. China)
3The first People's Hospital of Jiujiang, Jiujiang (Jiangxi, P.R.China)
Abstract:
The purpose of the research in this study is to evaluate the possibility that Reiki decrease the progression of atherosclerosis and decrease markers of neuroendocrine and sympathetic nervous system activation in an animal model. Methods: Eighteen Cholesterol-fed rabbits were divided into 2 groups and received daily visits from a Reiki healer or from an untrained individual for 10 weeks. The practitioner faced the cages and “beam” energy through the palms of their hands. After 10 weeks, the entire aorta of rabbit was removed and stained by Sudan IV. Plasma Cholesterol, ACTH, Cortisol, Epinephrine Levels were examined at pre-and post-test by radioimmunoassay or ELISA. Results: Statistically the differences were not significant though aortic atherosclerotic lesion areas of Reiki group were decrease compared to that of the control (p=0.22). There were significant elevation of cholesterol levels and decrease of ACTH levels at post-test in both groups, but no significant differences between Reiki and control (p=0.34, p=0.13). There were no significant differences in epinephrine (p=0.47), cortisol levels (p=0.74) between Reiki and control. Conclusion: The results did not show that Reiki is beneficial for decrease the progression of atherosclerosis and decrease plasma levels of the stress markers in the animal model.
Keywords:
Reiki, energy healing, atherosclerosis, cholesterol, ACTH, cortisol, epinephrine, rabbits
[Research Paper] Without Peer-Review

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.35)
“虹彩・瞳孔”対光反応の総合判定方法について

鎌田 明彦1 and Daehoon KIM2
1アイリテック株式会社(日本、東京)
2Iritech Inc.USA(米国、ヴィエナ)
Abstract:
従来より、瞳孔運動の捕捉は目視観察の延長として瞳孔径(実寸)の動きを精密測定することが通例とされてきた。また散乱(自然)光投射による瞳孔対光反応の撮像記録(ピュピログラム)から自律神経動態等を判定する視点、方法も開発課題とされてきた。それら瞳孔運動を観察する視点ならびに判定方法に関して、虹彩認証技術の応用による撮像解析法と簡易総合判定法(特許申請開示No.2008−259609)により、測定精度ならびに自律神経動態の判定手段としての実用性に関して向上が得られた。
Keywords:
瞳孔対光反応(反射)、自律神経、虹彩認証技術

[研究発表論文] without peer-review

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.84)
キュウリのバイオフォトンとガス生成量の変化

小久保 秀之1,2、小山 悟史3,1、高木 治1
1国際総合研究機構生体計測研究所(日本、千葉)
2明治大学情報コミュニケーション学部(日本、東京)
3明治大学大学院情報コミュニケーション研究科(日本、東京)伊藤 公紀
横浜国立大学大学院工学研究院・教授 (横浜、日本)
要旨:
切断したキュウリを空気中に静置したときに生じるバイオフォトン発光の近似式を作り、ガス生成との対応関係を調べた。総ガス生成速度は切断後30分で最大に達した後、単調に減少したが、時間と共にガス組成が変化すると考えられた。近赤外領域のバイオフォトン発光強度の変化は、連鎖反応とロジスチックに変化する反応の和でよく近似できた。また、ホルムアルデヒド検知管91Dが反応するガス量のピーク時刻が連鎖反応のピーク時刻にほぼ対応した。可視光領域の発光強度変化は、複数のロジスチック式の和でよく近似できた。また、非接触ヒーリングを行ったキュウリと何もしなかったキュウリの発光強度の差は連鎖反応式でよく近似できた。酢酸エチル検知管141Lが反応するガス生成量は、冬場と夏場とでピーク時刻が異なった。

Keywords:
極微弱生物光、緑の香、白いぼキュウリ、近赤外線、可視光、ガス検知管、ホルムアルデヒド、酢酸エチル、においセンサ、非接触ヒーリング、近似式


(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.95)
ガス測定法の応用−気場・非接触ヒーリング作用の測定−

小久保秀之1,2、高木治1、小山悟史3,1
1国際総合研究機構生体計測研究所(日本、千葉)
2明治大学情報コミュニケーション学部(日本、東京)
3明治大学大学院情報コミュニケーション研究科(日本、東京)伊藤 公紀
横浜国立大学大学院工学研究院・教授 (横浜、日本)
要旨:
白いぼキュウリを生体センサとするガス測定法の実験手法の細部と応用可能性を検討した。複数のヒーラーによる非接触ヒーリング実験の結果、ガス測定法では、ガス生成の多寡、すなわちにおいの強弱を変える実験指示が有効と考えられた。試料の半数を主実験に、残り半数をブランク実験に使い、ブランク実験のデータで主実験のデータを零点補正する手法が有効だった。ガス検知管はロット番号の統一が必要と考えられた。被験者の能力が非常に強い場合には、数m〜10m程度の距離まで被験者の影響が及ぶ可能性が見出された。また、特異現象の背景ポテンシャルが存在し、ゆっくり変動しているという可能性を検討するべきだと考えられた。「気場」として知られる長野県伊那市の分杭峠の測定を試みた結果、特異現象と同じ効果をもたらす未知の要因が自然界に存在している可能性が示唆された。

Keywords:
白いぼキュウリ、酢酸エチル検知管141L、非接触ヒーリング、分杭峠、ポテンシャル、零点同時補正法、SCAT

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.113)
スタッフの増員が看護師の意識に及ぼす影響の検討

笹山 雪子1、河合 由美子1、足達 義則2
1名古屋市立西部医療センター城北病院看護部(日本、愛知)
2中部大学経営情報学部(日本、愛知)
要旨:
看護師の意識が患者に及ぼす影響には大きなものがある。従って、ケアの充実の観点からも、看護師がゆとりのある状況で患者に接することができるようにすることが重要である。しかしながら、医療現場では人員に余裕がなく、忙しさにまぎれて満足な看護ができているとは言い切れない。本研究では、増員によって看護ケアの実践に対する看護師の意識がどのように変化したかを、アンケート調査を実施して検討した。また、スタッフと管理職との間の意識の違いについて検討した。

Keywords:
nursing stuff increase, 7:1 nursing system, patient care, nurse's consciousness, lifestyle help


(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.121)
スピリチュアリティを記述する方法論としての非人称の視点

尾崎 真奈美、甲田 烈
相模女子大学 人間心理学科(日本、神奈川)
要旨:
本研究の目的は、スピリチュアリティを記述するための一つのメタ方法論として非人称の視点を提唱し、その基礎の上にポジティブ心理学の方法論を活用することによって、スピリチュアリティ3因子論をインテグラル・ポジティビティとしてモデル化することである。第一に、研究者の無自覚的な視座に関する哲学的議論を概観し、行動主義とナラティブアプローチのような様々な方法論における葛藤を克服するメタ方法論として非人称の科学を定式化した。第二に、これまでの心理学方法論を、一人称的・二人称的・三人称的・さらに非人称的視点から、それぞれの視点における研究の目的・対象・強み・限界について整理した。第三に、主観・客観的視点を統合する非人称の科学的視点から、スピリチュアリティ3因子論をインテグラル・ポジティビィティとして記述した。以上の過程を通じて非人称的視点という方法論を示した。それは、様々な研究方法より、目的に沿って自由に適した方法を選択することを可能にするメタ方法論である。またこの新しい方法、非人称の科学を用いることによって、スピリチュアリティや超越性を、実証科学であるポジティブ心理学の枠組みで記述する可能性を提示した。
Keywords:
スピリチュアリティ、非人称、視座、インテグラル、ポジティビティ、モデル、現象学、超越的、場、方法論

[会長講演]

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.126)
科学のあり方について:地球温暖化問題にまつわる最近の事件を例にして

伊藤 公紀
横浜国立大学 大学院 工学研究院 教授(神奈川、日本)
国際生命情報科学会(
ISLIS) 会長
第29回生命情報科学シンポジウム 大会長
要旨:
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書を基にしたCO2削減が叫ばれているが、その土台となる情報に疑問も生じている。これは、科学のあり方を考える上でも参考になると思われる。講演では、次のような話題について紹介したい。
1. 気温データの信頼性について 1-1. ホッケースティック(HS)曲線の破綻−過去気温の代表的なデータであるHS曲線は、種々の不適切な作業によってできたことが判明している。1-2. NASA(米航空宇宙局)の地表気温データ−観測点の急激な減少等により、偽の温度上昇傾向が生じているらしい。
2. IPCC報告書とステークホルダー(利害関係) 2-1. クライメートゲート事件−IPCC報告書著者らが、データ操作や論文ピアレビューへの干渉を行っていた。2-2. グレーシャーゲート事件−IPCC報告書におけるヒマラヤ氷河についての記述は、根拠がなく、気候変動のインパクトを強調するとめに誇張された。2-3. アマゾンゲート事件−熱帯林の脆弱性を古誇張するため、IPCC報告書に根拠のない数字と文を記述した。
 これらの例は、科学のプロセスが、いかに研究者の動機によって歪められるかを示している。

Keywords:
地球温暖化問題、IPCC報告書、クライメートゲート事件、グレーシャーゲート事件、アマゾンゲート事件 

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.127)
環境科学は近代科学ではなく未来の科学である

渡辺 恒夫
東邦大学理学部 生命圏環境科学科(日本、船橋)
要旨:
科学のありかたを批判的に考察するために、主観的vs客観的、分析vs総合、価値中立vs価値指向の3つの対立軸を用意しよう。ガリレイ以降の近代科学は、これらの対立項の左側へと展開することによって、大きな成功を収めてきた。しかしその代償は宇宙からの意味の剥奪と環境破壊であった。これと対照的に環境科学に要請されているのは、右側への展開である。第1に、「環境」は「主体ないし主観」と独立に物理的に実在するものではなく、主観性を前提とした概念である。第2に、環境は主体に対して常に全体として立ち現れるがゆえに、近代科学の正統である分析的方法は対象適合的でなく、より生態学的に妥当な総合的方法が求められる。第3に、環境は主体にとって常に良いか悪いかという意味・価値をもって現れるがゆえに、価値中立は許されず、環境科学者は絶えず、何が誰にとって良い環境かの問題意識を求められる。このような、「未来の科学」としての環境科学の特徴は、生命情報科学にも通じるところがあろう。

Keywords:
近代科学、環境科学、主観的vs客観的、分析vs総合、価値中立vs価値指向

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.128)
退行催眠時に生じる異言とそれが示唆するもの

大門 正幸1、稲垣 勝巳2、末武 信宏3
1中部大学(日本、愛知)
2稲垣勝巳メンタルヘルス研究室(日本、岐阜)
3さかえクリニック(日本、愛知・東京)
要旨:
退行催眠中に生じる異言(本人が学んだことのない言語を使うことが出来る異言と呼ばれる現象が生まれ変わり仮説を支持する強い証拠になることはよく知られている。大門他 (2009)1)では、おそらく日本で初めての事例として、当人の経歴から、知っているはずがないネパール語を退行催眠中に話す日本人の例について報告した。本稿では、この事例について2009年の時点では十分検討がなされていなかった点を補い、より完全な形で報告を行う。

Keywords:
xenoglossy, reincarnation hypothesis, hypnosis, regression therapy, language, Nepali, Nepal

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.140)
脳の活動と抑制II

河野 貴美子、小久保 秀之、高木 治、山本 幹男
国際総合研究機構 生体計測研究所(日本、千葉)
要旨:
脳はその数パーセントも使用していない、とよくいわれる。あと1〜2%多く使うだけでも、飛躍的に頭が良くなる、という論理になる。本当だろうか? 脳における情報処理活動の中心は神経細胞(ニューロン)であるが、その働きを栄養補給などで支えるための細胞はニューロンの10倍近い数が存在する。100億個、いやそれ以上とも言われる脳細胞のほとんどが何もせず存在しているだろうか。そもそも生体内で必要のないもの、何の働きもしないものはすぐ処理されてしまう。脳細胞とて同様である。もちろんすべて必要最小限の数のみ存在するわけではなく、安全率を見込んだ数が用意されているが、何もしていないということはない。ニューロンは役割に応じて、刺激が来ればすぐ活動出来るよう、常にスタンバイしている。したがって勝手に活動しすぎないよう、うまく抑制することの方がむしろ重要である。混乱せず、スムーズに、効率よく情報処理するようコントロールすることこそが脳の役目と言ってもよい。そのような脳のコントロール、抑制の状態を、Craig Junjulas氏の脳波を参考にしながら考えてみたい。

Keywords:
脳波、波、神経細胞、活性、抑制

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.146)
体感音響が体に与える影響

喜田圭 一郎1、中村 泰治2、斉藤 明子3、坂本 菜穂子3
1サウンドヒーリング協会(日本、東京)
2昭和大学 名誉教授(日本、東京)
3サウンドヒーリング協会認定セラピスト(日本、東京)
要旨:
私達人間は皆等しく母親の胎内で心音につつまれて約10ヶ月余りの時間を過ごす。地球の生命進化の30億年のプロセスを急ぎ足で経験しながら育っていく。耳が機能し始める4ヶ月半頃からは母の心音を安心できる環境の音と記憶し潜在意識のメモリーに蓄えていく。リー・ソルク(※1)らは新生児(102人)に安定した大人の心音(72BPM, 85db)を休むことなく聞かせる実験により、心音を聞かせた新生児グループの70%は体重が増え、気分がなだめられ、泣いている時間が少ないことを明らかにした。
 大人になってからもゆったりとした安定した音を繰り返し聞くと人は安心し、やすらぎを感じる。その音を体感音響として体に響かせると、羊水の中で体に響いた音の記憶を想いだすのか、更に体の緊張がほぐれ、血液の循環がよくなり、手足が温かくなり、リラックス効果が高くなる。宮澤賢治の童話「セロ弾きのゴーシュ」のでは森の動物たちがゴーシュの弾くチェロの音の振動が野ねずみやたぬきの体に伝わり、血流がよくなり自然に病気が治るという場面がある。
 音は空気中を波として秒速340mの速さで伝わるが、水の中では速度が早くなり秒速1500mになる。金属や骨など固体の中では更に早くなり秒速5000m以上となる。伝達速度が速い媒体の中では、音のエネルギーが減衰することなく周囲に伝わりやすい。約70%の水と骨で成り立つ人体は音が伝わりやすく、共鳴しやすい構造といえる。体の中に入った音は波として細胞一つ一つに細かな波紋を広げ骨や体液を伝わっていく。1秒間に20回から20000回常に変化しながら振動する心地よい上質の体感振動が細胞レベルのマッサージを行っていると言える。特に27.5Hz〜約220Hz近辺の低い周波数の音は頭部よりも胸部や腹部また下肢に共鳴しやすい。チェロの心に訴える音もこの低い音であり感動や満足感を倍増する帯域でもある。チェロの奏者はこの音の情報を空気振動による耳からと、チェロに触れる手や体の骨と水から伝わる体感振動によるものとの2つの音の情報を受け取っている。
 チェロを演奏する糸川英夫博士のボーンコンダクション理論の提言(1972年)から始まった体感音響装置の開発は体に心地よく響く低い音を、空気振動でなく直接体に伝わる体感音響として再現することを目的にしている。この開発に携わった喜田は1992年に手技療法として使える体感音響装置を考案し、更に小型化へ改良した手に持てる体感音響システムが医療や福祉、介護また美容の現場で現在利用され高い評価を得ている。補完代替医療や美容法を援助する道具としてである。この小型体感音響システムはセラピストが手に持ってクライエントの体の部位に当てて使う方法と、クライエント自身が自分でソファーやベッドなどで体の部位に当てる方法の2つの使い方がある。
 この小型体感音響システムの利用者(約700名)からの主観的感想の中に、体が軽くなった、化粧がのりやすくなった、肌がつるつるしてきた、足が軽くなった、足のむくみがとれた、手足が温かくなった、など体の代謝に関連する報告が数多く見られる。今回、セラピストが行う施術方法により得られた未発表の結果をまとめ、顔面の水分量、掌と足の皮膚の温度変化からみた体感音響が与える体への影響を探ってみた。
その結果、顔面の水分量は額で30.3%から42.9%へ。頬で33.9%から37.2%へ、あごで33.9%から41.4%へと増加した。また手のひらの温度は29.67度から31.42度へと上昇した。また足の温度は親指先で21.4度から23.5度へ親指付け根で22.8度から24.65度へ人差し指で21.2度から24.85度といずれも上昇した。
この結果は体感音響により伝わる音波が体の細胞内や細胞外の体液また血液に響き、代謝が良くなったことによるものと推測する。薬に頼らず、自分自身に内在する力で健康を維持する人づくりに貢献できる可能性が見え初めてきたといえる。
 ※1  Lee Salk コーネル大学小児心理学博士

Keywords:
体感音響、サウンドヒーリング、Healing Vibration 、補完代替医療

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.148)
食品素材のストレス改善効果

橋爪 秀一
森永製菓株式会社 研究所
要旨:
ストレス指標として、唾液中のクロモグラニンA (CgA) 及び瞳孔対光反応(瞳孔ストレス強度)を用いて、食品素材のストレス改善効果を検討した。それぞれの食品素材はデンプンペーストに混ぜ合わせた添加物として摂取した。その結果、CgAを指標とした場合に水との間で有意差 (P<0.05) が得られたのは唐辛子の添加物であり、瞳孔ストレス強度で有意差 (P<0.05) が得られたのはテオブロミン-リッチ カカオエキス、抹茶或いはカルダモン(カレースパイス)との添加物であった。更に、これらの食品素材を練り込んだソフトキャンディーについてストレス改善効果の検討を行ったところ、カルダモン、唐辛子或いはブドウ種子ポリフェノールを練り込んだソフトキャンディーが両指標で有意差 (P<0.05) を有することが明らかになった。

Keywords:
クロモグラニンA、瞳孔対光試験、精神的ストレス、ストレス改善食品素材

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.153)
太極拳:武術から健康法へその科学的解明を目指して

桂川 秀嗣1、河野 貴美子1,2、橋爪 秀一1,3、鎌田 明彦1,4
小久保 秀之1,2、山本 幹男1,2、渡辺 恒夫1
1東邦大学理学部 心と生命の環境学研究センター(日本、船橋)
2国際総合研究機構 生体計測研究所(日本、千葉)
3森永製菓株式会社 研究所(日本、横浜)
4アイリテック株式会社(日本、東京)
要旨:
太極拳の最大の特徴は非常にゆっくりとした動きである。その動きに意識、呼吸を重ね合わせるという、他の武術には見られない特徴がある。また、意識、呼吸を重視することから、禅と比較され、しばしば動く禅に例えられる。太極拳にはその成立過程で伝承されている理論がある。その理論から、武術から健康法への要素を読み解くことができるか? また、その理論では禅のように、心の問題はどのように扱われているか? さらに、数十年前より禅瞑想に対して、さまざまな科学的な解明が行われたように、太極拳の理論が科学的に解明されるであろうか?

Keywords:
太極拳、意識、呼吸、動作、禅瞑想, 太極拳の理論

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.154)
太極拳実施による瞳孔対光反応及びEDAの変化

鎌田 明彦1、高木 治3、河野 貴美子2,3、小久保 秀之2,3、橋爪 秀一4
桂川 秀嗣3、山本 幹男2,3、渡辺 恒夫2
1アイリテック株式会社(日本、東京)
2東邦大学理学部 心と生命の環境学研究センター(日本、船橋)
3国際総合研究機構(日本、千葉)
4森永製菓株式会社研究所(日本、横浜)
要旨:
太極拳実施に伴う各種生理指標の観察において、今回は初心者と鍛錬歴20年の熟練者との2名の協力者により、瞳孔対光反応と皮膚電気伝導度(SCL)を測定した。本実験から瞳孔対光反応とSCLとは各々相反する動きが観察された。これら二つの指標はいずれも自律神経活動との関連が知られており、その発現様態の相違(不均一な地域性反応など)が示唆された。

Keywords:
瞳孔対光反応(反射)、自律神経、EDA(皮膚電気活動)、SCL(皮膚電気伝導度)

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.161)

太極拳が脳活動に与える影響

中谷 康司、有田 秀穂
東邦大学医学部統合生理学(日本、東京)
要旨:
我々は太極拳の実施が、脳波の成分を増加させ、前頭前野での血流上昇を引き起こすとともに、脳幹縫線核のセロトニン神経を活性化させることを見出したので報告する。これらの結果は、前頭前野と脳幹縫線核セロトニン神経の解剖学的な関係から、前頭前野の活性化がセロトニン神経系を賦活し、脳波の成分を増加させたと考えられる。
Keywords:
Keywords:
セロトニン、太極拳、前頭前野、近赤外光脳機能イメージング装置、脳波

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.162)
セロトニン講座:セロトニン神経を活性化する生活

有田 秀穂
東邦大学医学部統合生理学(日本、東京)

要旨:
セロトニン神経の生理機能は、覚醒レベル調節、レム睡眠、鬱などの気分調節、内因性痛覚抑制、抗重力筋の促通効果、副交感神経から交感神経への切り換え、など多岐にわたる。その活動は覚醒時に持続的インパルス発射があるので、脳神経系の覚醒状態を調節するものである。セロトニン神経を更に賦活する因子は呼吸や歩行のリズム運動であり、その行動は坐禅、ヨガ、太極拳に相当する。これらを踏まえ、セロトニン的生活について議論する。

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.163)
負性インピーダンス変換器を用いたツボの等価回路決定法の改良

鈴木 昭二、足達 義則2、青木 孝志2、川口 雅司
1鈴鹿工業高等専門学校(日本,鈴鹿)
2中部大学 (日本,春日井

要旨:
本論文では、負性インピーダンス変換器(NIC)を用いた等価回路決定法における測定回路の改良を提案している。この方法では、一箇所の測定が数分でできる利点がある。測定原理は、OPアンプの仮想接地の概念を利用し、非接地キャパシタンスCだけの回路にしておき、それを外部に付けたコイルと共振させて、その共振周波数からCの値を測定している。改良された測定回路では測定精度も改良されている。。

西洋における心と体の統合性の認識は「真に病気を治すのは内なる自然の力である」といった紀元前4世紀のギリシアのヒポクラテスまでさかのぼり、それから200年後のピタゴラスも「分けることのできない完全な全体として人を診るときに、病気の治療はもっとも有効におこなわれる」と考えていた。このすぐれてホリステックな人間の心身に対する認識は17世紀までは一般的常識として捉えられていた。
 そして現代、健康や幸福な人生を考えるとき、改めて心が与える体への影響は無視することのできない要素となった。音は心を元気にするだけでなく、体へも振動としてプラスの影響を与える。その音の活用方法や可能性を探ってみた。
Keywords:
acupuncture point, Hoku, Oriental medicine, negative impedance converter (NIC)

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p171)
予備調査:岡田式浄化療法は肩凝りや苦痛を緩和しQOLを改善させる
津田 康民, 和泉 充浩2, 藤井 淳史2, 中島 宏平2
1(財)エム・オー・エー健康科学センター(日本, 静岡)
2MOA インターナショナルサポートセンター 浄化療法育成研究チーム(日本, 東京)
要旨:
岡田式浄化療法(OPT)の効果が筋硬度等を用いて療法士によって調査された。15分の岡田式浄化療法の自己施術により肩凝りが緩和されること、2か月の継続的な自己施術の実施によりQOLが改善されることが確認された。肩凝り、腰痛、頭痛の自覚をもつ被験者対し、30分間のOPTの施術により施術箇所の凝りが緩和されることが示唆された。
Keywords:
Okada purifying therapy, stiffness, muscle hardness meter, CAM

(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p177)
順式持続納(吸)気延長法による肥満解消と多彩な呼吸調節作用63例
曽 紅
帯津三敬病院養生塾・茨城県南支部ミトコンドリア細胞呼吸学園(日本、茨城)
要旨:
ミトコンドリア脂肪酸分解経路における細胞呼吸調節機構とヒト腹式呼吸法との接点に着目し、提案していた「脂肪酸分解経路に沿ったミトコンドリア細胞呼吸ダイエット法」1)以下略して「順式持続納(吸)気延長法」を63例に応用した結果、横隔膜などの吸気筋持続活動強化による求心路「吸気筋交感神経β系―視床下部」活性と思われる肥満解消と多彩な生理作用効果を得られたことを報告した。
対象の63例は肥満、更年期障害、不妊症、ウツ病、膠原病などの症状を呈していた。順式持続納気延長法を応用した結果、横隔膜などの吸気筋交感神経系―視床下部―褐色脂肪細胞ミトコンドリアの持続的な熱産生亢進と、交感神経を介しての強力な発汗による持続的な熱発散亢進と、白色脂肪細胞の酸酸化活性と思われる肥満解消効果。ATP合成増幅による疲労解消。レプチンやカルシトニンによる摂食抑制。レプチン利尿効果。cAMP濃度上昇と諸ホルモンの合成増幅による不妊、更年期障害の改善。うつ病の解消。骨粗鬆症の解消。ミトコンドリアアポトーシス機能改善と思われる膠原病の好転。グルコース取り込み促進などの効果を得られた。その上、「納気ー視床下部―交感神経系―脂肪分解―熱産生−熱発散」という脂質代謝における順式納気の呼吸調節生理基盤も明らかになった。

Keywords:
ミトコンドリア、腹式呼吸法、順式持続吸気延長法、ダイエット法、視床下部、横隔膜、交感神経系、持続熱産生、持続熱発散、求心性


(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.183)
体外離脱体験中の脳波変化の測定
乾 泰宏、河野 貴美子2
国際総合研究機構 生体放射研究室(日本、千葉)
要旨:
体外離脱体験とは、あたかも意識が肉体から抜け出したかのように感じる意識経験である。「タオ内丹法」(仙道)修練の中に体外離脱体験を誘導する方法がある。この方法で導かれた瞑想的な体外離脱体験状態の脳波を、最新の脳波計を用いて測定した。同方法に熟達した熟練者1名(男, 71歳)による測定の結果、体外離脱時に波が顕著に出現することが観察された。
Keywords: 体脱体験、OBE、脳波、波、神経細胞、抑制、タオ、仙道グ


(J. Intl. Soc. life Info. Sci. Vol.28, No.1, p.188)
二種類の気功法における脳血流変化の差異
朝日 舞1、河野 貴美子2、小久 保秀之2
1日本ライブセラピー協会(日本、千葉)
2国際総合研究機構 生体計測研究所(日本、千葉)
要旨:
二種類の気功法(楽以舞(ライブ)療法(セラピー)):「The・愛」及び「創美功」の実施中における頭頂部の脳血流変化を、近赤外分光血流計を用いて測定した。被験者は日本流気功道に熟達した女性1名である。そこで行われるライブセラピー「The・愛」は、創始者の自発功から自然にパターン化されて生まれたもので、6つの型により構成される。体験者の体感で、爽快感、満足感等の他、身体各部の痛み軽減、視力改善などが報告されていることから、実施中の身体的変化及び二つのライブセラピーの差異を脳の変化から捉えることを目的に実験を行った。その結果、「創美功」実施中より「The・愛」実施中の方が頭頂運動野近辺の血流が増大していることが認められた。今後さらに、初心者、中級者との比較、個人による違い等、検討したいと考えている。
Keywords: 気功、ライブセラピー、近赤外分光血流計、fNIRS、脳血流量、頭頂葉


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Last Modified: April 13, 2010